ジムには週1〜2回通っています。ビッグスリー中心の筋トレで、1回あたり1.5〜2時間。有酸素運動はほとんどやりません。
やらない理由を、私は3つ持っていました。
- 同じ時間なら、消費カロリーは大きく変わらない
- 筋肉がつけば基礎代謝が上がるから、結果的に得
- 有酸素をやると筋肉が落ちる
この記事を書くにあたって、これらを研究で確かめました。結果として、2つは支持できませんでした。
先に、何のためにやっているかを書きます
この手の話は、目的を書かないと噛み合いません。
正直なところ、動機はひとつではありません。 体のラインを整えたいというのはあります。健康でいたいし、長く元気でいたいとも思っています。ただ、続いている一番の理由を挙げるなら、やっているうちに面白くなったからです。扱う重量が伸びると、次はもう少し、となる。
つまり、健康もボディメイクも含みつつ、いま体を動かしているのは、それが楽しいからという順番です。
そのうえでこの記事では、健康や消費カロリーの数字を扱います。ただしそれは、「有酸素をやらない理由が正しかったか」を確かめるためであって、筋トレの量や内容を評価するためではありません。
この記事は「有酸素は不要」という主張でもありません。 調べた結果を正確に書いて、それでも自分がどう判断したかを書きます。運動の処方を勧めるものでもありません。
理由1:消費カロリー ── 条件によって答えが変わる
同じ時間で比べれば、有酸素のほうが多く消費します。 ここは私の認識が甘かった部分です。
METsで見ると、バーベルを使う中〜高強度の筋トレはおよそ6〜8METs。時速10km前後のランニングは10METs前後になります。単位時間あたりでは、走るほうが上です。
ただし、これは筋トレの消費が少ないという意味ではありません。 体重60kgの人が30分やれば、中〜高強度でおよそ190〜250kcal。一般に、1回30分の筋トレで150〜200kcal程度の消費が見込めるとされています。決して小さい数字ではありません。
そして、1回のセッション全体で比べると話が変わります。
私の筋トレは1回1.5〜2時間です。一般的な有酸素運動のセッションは30〜45分程度でしょう。時間が3倍あれば、単位時間あたりの消費が下回っていても、総量では並ぶか上回ることになります。
つまり私の実感は、「同じ時間なら」では間違いで、「1回あたりなら」では成立しているというのが正確なところです。
ひとつ補足すると、高重量・低回数で休息を長く取るスタイルは、平均強度が下がります。 私のようにビッグスリー中心でしっかり休むやり方だと、同じ「筋トレ1時間」でもサーキット形式より消費は少なくなります。ここも条件次第です。
理由2:基礎代謝 ── 思っていたのと、違う形で間違っていました
この節は、書き直しました。 最初は「筋肉1kgあたり13kcalしか増えないのだから、基礎代謝を理由にするのは無意味だ」と書くつもりでした。それも間違いだったからです。
順を追って書きます。
まず、13kcalという数字自体は正しい。 骨格筋の基礎代謝率は1kgあたり1日約13kcalとされています。厚生労働省のe-ヘルスネットでも使われている数値です。脂肪組織は約4.5〜5kcal/kg/日なので、筋肉はその3倍程度ということになります。
ここで多くの人がやってしまうのが、この数字を掛け算することです。私もそうでした。5kg増やせば65kcal、というように。
この計算は成立しません。
横浜市スポーツ医科学センターは、この点をはっきり指摘しています。筋トレには自律神経系や内分泌系の働きを活性化して全身のエネルギー代謝を促進する効果もあるため、単純に1kgで13kcal、2kgで26kcalという計算にはならない、と。
実際、数ヶ月の筋トレ介入研究から算出すると、除脂肪量1kgあたり50kcal前後という数字が出ることがあります。これは筋組織そのものの代謝コスト(13kcal)に加えて、タンパク質合成の亢進、ホルモン環境の変化、神経系の適応といった全身のコストを含んだものです。
つまり「13kcalしか増えない」も言いすぎで、「50kcal増える」も条件つきという状態です。
では私の理屈はどうだったのか。「基礎代謝が上がるから有酸素は要らない」という結論の立て方が、そもそもおかしかったというのが結論です。
基礎代謝が13kcal増えようが50kcal増えようが、それは有酸素をやらない理由にはなりません。 有酸素をやる意味は消費カロリーだけではないからです。私は、数字の大小以前に、関係のない話を根拠にしていました。
触れておきたい:アフターバーン(EPOC)について
消費カロリーの話をするなら、これに触れないわけにはいきません。
筋トレの後、運動を終えてからも酸素消費が高まった状態が続きます。EPOC、いわゆるアフターバーン効果です。「筋トレは終わったあとも燃える」と言われるのはこれのことです。
事実としては、あります。 ただし、上乗せは総消費の数%から十数%程度にとどまるとされていて、過大評価は禁物という扱いが一般的です。
私は正直、これをもっと大きなものだと思っていました。「筋トレは後からも燃えるから、有酸素の分は取り返せる」くらいの感覚がどこかにあった。実際の数字を見ると、そこまでの規模ではありません。
これも、理由2と同じ種類の思い込みでした。
理由3:有酸素で筋肉が落ちる ── 半分正しい
これは「言いすぎだが、まったくの誤りでもない」というのが結論です。
筋トレと持久系トレーニングを併用したときに、筋肥大や筋力の伸びが鈍る現象は「干渉効果」と呼ばれ、実際に確認されています。
Wilson らが2012年に発表したメタ分析が、この分野の基準になっています。21の研究から422の効果量を解析したもので、重要なのは干渉が一律には起きないという点です。
筋トレとランニングを併用した場合は筋肥大・筋力ともに有意に低下したが、自転車では低下しなかった。 さらに、持久系トレーニングの頻度と時間が長くなるほど、筋肥大・筋力・パワーへの悪影響が大きくなるという負の相関も報告されています。
2022年に発表された筋線維レベルのメタ分析でも、干渉効果は比較的小さく、自転車よりランニングで顕著という結果でした。
つまり正確に言うとこうなります。
有酸素をすると筋肉が落ちる、のではない。ランニングを高頻度・長時間やると、筋肥大と筋力の伸びが鈍る。自転車なら影響は小さい。
私は「有酸素」とひとまとめにしていました。種目と量で結果が変わるという部分が抜けていました。
3つの理由のうち、重量を伸ばしたい人間にとって無視できないのはこれだけです。ただ、結論は「有酸素をするな」ではなく、「するなら自転車を選び、量は抑えめに、そして筋トレの後に」になります。
順番については、筋トレを先にやるのが一般的な推奨です。有酸素を先にやるとグリコーゲンが消費され、筋トレで扱える重量が落ちるためです。総ボリュームが減れば、筋肥大の刺激も減ります。
なお、有酸素の量について「1日30分を週2〜3回まで」といった具体的な目安を示す指導者もいます。目安として参考にはなりますが、その根拠として挙げられる説明(コルチゾールの影響など)は、研究の裏付けが強いとは言えない部分もあります。数字は参考程度に受け取るのが妥当だと思います。
健康面については、調べて分かったことがあります
有酸素運動が必要かどうかを調べていて、東北大学・早稲田大学・九州大学の研究チームによる2022年のメタ分析に行き当たりました。British Journal of Sports Medicine に掲載されたものです。
筋トレ単独でも、健康効果は明確にあります。 全死因死亡、心血管疾患、がん、糖尿病のリスクが10〜17%低下すると報告されています。何もしない場合と比べれば、筋トレだけでもはっきり良いということです。
そのうえで、筋トレと有酸素を組み合わせた場合、全死因死亡は40%、心血管疾患による死亡は46%、がんによる死亡は28%低下していました。単独より明らかに大きい数字です。
著者の一人はこう述べています。筋力トレーニングは、推奨やガイドラインにおいて有酸素運動の代わりにはなり得ない。
私は「有酸素は自分には要らない」と言うときに、健康面でも要らないという意味を含ませていました。 そこは正確ではなかったと思います。筋トレだけでも十分に良い。ただ、併用のほうがさらに良い。 そういう関係でした。
なお、これらは観察研究をまとめたものなので、因果関係を断定するものではありません。研究者自身も、データが限られていること、多くが米国での研究であることを限界として挙げています。
それでも、私はまだやっていません
3つの理由のうち2つが崩れました。健康面では併用が推奨されているとも分かりました。
それでも、いまのところ有酸素は始めていません。
理由は変わりました。以前は「意味がないから」でした。いまは違います。
ジムにいる時間を、いまやりたいことに使っているからです。
1回1.5〜2時間、そこにビッグスリーを入れると埋まります。有酸素を足すなら、筋トレを削るか、通う回数を増やすか、1回の時間を延ばすことになる。いまのところ、そのどれも選んでいない、というだけの話です。
これは合理的な判断というより、優先順位の問題です。健康面の数字を見た以上、「有酸素に意味がない」とは言えません。知ったうえで、いまは選んでいないという状態です。
もし始めるなら、自転車を選ぶと思います。 筋トレのあとに、短めに。干渉効果の研究を読んだあとなら、そのほうが相性がいいと分かっているからです。調べたことは、無駄になっていません。
この記事で言いたいこと
自分がやっていることを正当化する理屈は、検証しないと持ち続けてしまいます。
私は3つの理由を持っていました。どれも、それらしく聞こえるものでした。実際に調べたら、2つは崩れました。しかも崩れ方が、想像していたのと違いました。
基礎代謝の話は、「効果が小さいから間違い」ではなく「そもそも有酸素をやらない根拠にならないから間違い」でした。数字の大小を調べているうちに、論理のほうがおかしいと気づいた形です。
崩れたからといって行動を変えたわけではありません。やりたいことが変わっていないからです。ただ、「意味がないからやらない」と「意味はあるが優先していない」は、まったく別のことです。後者のほうが、自分に対して正直だと思います。
道具を選ぶときも同じで、選んだ理由が本当に正しいかは、たまに確かめたほうがいいというのが、このサイトを書きながら思っていることです。
まとめ
- 筋肉1kgあたりの基礎代謝は約13kcal。 ただしこれを掛け算するのは誤りで、筋トレには全身の代謝を促進する効果もある
- そして基礎代謝の増減は、そもそも有酸素をやらない根拠にならない
- EPOCによる上乗せは、総消費の数%から十数%程度。 思っていたより小さい
- 干渉効果は種目と量による。 ランニングでは筋肥大・筋力の低下が確認されたが、自転車では確認されなかった
- 同じ時間なら有酸素のほうが消費は多い。 ただし筋トレの消費も30分で150〜200kcal程度あり、少なくはない
- 筋トレだけでも死亡リスクは10〜17%下がる。 そのうえで、有酸素と併用するとさらに下がる
- 私が有酸素をやらないのは、ジムにいる時間を、いまやりたいことに使っているからです。意味がないからではありません
なお、運動の始め方や量については、持病のある方や不安のある方は医師にご相談ください。この記事は個人の記録であって、処方ではありません。
出典
- Momma H, Kawakami R, Honda T, Sawada SS. Muscle-strengthening activities are associated with lower risk and mortality in major non-communicable diseases: a systematic review and meta-analysis of cohort studies. Br J Sports Med. 2022;56(13):755-763.
- Wilson JM, Marin PJ, Rhea MR, et al. Concurrent training: a meta-analysis examining interference of aerobic and resistance exercises. J Strength Cond Res. 2012;26(8):2293-2307.
- Schumann M, et al. The Effects of Concurrent Aerobic and Strength Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022.
- 厚生労働省 e-ヘルスネット(加齢とエネルギー代謝)
- 横浜市スポーツ医科学センター(減量の理論)

