Ankerの新しいイヤホンを買おうとして、危うく1万円多く払うところでした。
Soundcore Liberty 5 Pro Max。36,990円。上位モデルですから、音もノイズキャンセリングも通話性能も、下位のLiberty 5 Pro(26,990円)より良いのだろうと思っていました。
まったく違いました。
イヤホン本体の性能は、Pro と Pro Max で完全に同一です。1万円の差は、すべて充電ケースに乗っています。そしてそのケースの機能が、自分の使い方で本当に活きるのかを調べていくうちに、在宅でオンライン会議をする人にとっては、かなり厄介な前提があることが分かってきました。
この記事では、その1万円が何なのかを整理します。結論を先に書くと、多くの人はProで足ります。 ただし例外があり、その例外の条件が想像よりずっと狭いという話です。
なお、価格・仕様はすべて2026年9月時点のものです。購入前に必ず公式ページで最新の情報をご確認ください。
結論を先に知りたい方へ:筆者が選んだのは Liberty 5 Pro です(記事内の商品カードへ移動)。理由はこの記事の判定の節にあります。
まず事実:イヤホン本体は完全に同じ
両モデルで共通している項目を並べます。
| 項目 | Liberty 5 Pro / Pro Max 共通 |
|---|---|
| AIチップ | Anker独自「Thus」 |
| ノイズキャンセリング | ウルトラノイズキャンセリング 4.0 |
| ドライバー | 9.2mm ダイナミックドライバー |
| マイク | 8基+骨伝導センサー |
| コーデック | SBC / AAC / LDAC |
| 立体音響 | Dolby Atmos 対応 |
| Bluetooth | 6.1 |
| マルチポイント | 最大3台(LDAC併用時は2台) |
| 防塵防水 | IP55(イヤホン本体のみ) |
| 連続再生 | ANCオン 本体6.5時間/ケース込み28時間、ANCオフ 本体12時間/ケース込み50時間 |
| 片耳重量 | 約5.9g |
音質、ノイズキャンセリング、通話品質、装着感。耳に付けて使う体験に関わる部分は、一切変わりません。
「Maxのほうが音がいいはず」という思い込みで選ぶと、1万円が丸ごと無駄になります。私がまさにそう考えていました。
差はここだけ:充電ケース
| 項目 | Liberty 5 Pro | Liberty 5 Pro Max |
|---|---|---|
| 価格(税込) | 26,990円 | 36,990円 |
| ディスプレイ | 搭載(小型) | 1.78インチ AMOLED |
| AIボイスレコーダー | なし | 搭載 |
| 壁紙カスタマイズ | — | 対応 |
| ケース込み重量 | 約68.5g | 約85.5g |
| カラー展開 | 4色 | 2色 |
Proにもディスプレイは付いています。 電池残量やモードの確認はProでもできます。Maxはそれが大型化し、壁紙を設定できるようになり、そこにAI録音機能が加わる、という構成です。
つまり1万円の正体は、実質的にAIボイスレコーダー機能です。
ケースが約17g重くなる点も、毎日ポケットに入れる道具としては小さくない差です。
本題:その録音機能、あなたは使えるのか
ここからがこの記事の主題です。「録音できて便利そう」で判断すると失敗します。使えるかどうかを決める条件が4つあります。
条件1:オンライン会議が録音できるとは限らない
これが最大の落とし穴です。
Anker公式の製品ページには、次の注記があります。AIボイスレコーダー機能は2026年5月現在、充電ケースを使用した対面録音にのみ対応しており、スマートフォン使用時の通話・オンライン会議の録音には2026年夏頃から対応予定である、と。
この注記は、この記事を書いている2026年9月時点でも公式ページに残っています。
つまり現状で確実に録音できるのは、同じ部屋にいる相手との会話です。商談、取材、対面の打ち合わせ、講義。これらは対象になります。
一方で、在宅勤務でZoomやTeamsの会議に出ている人が「議事録が自動で作れる」と期待して買うと、目的の用途にまだ届いていない可能性があります。
対応予定とされていた時期は既に過ぎていますが、公式の注記は更新されていません。録音が目的なら、購入前にAnker公式ページとSoundcoreアプリで現在の対応状況を必ず確認してください。 ここを確認せずに買うのが、いちばん高くつく買い方です。
条件2:文字起こしの無料枠は、月120分で24ヶ月まで
こちらも見落としやすい点です。ここは具体的な数字が出ています。
Anker公式によると、Liberty 5 Pro Max の文字起こし無料枠は、専用アプリと連携してから24ヶ月間、毎月120分です。翌月への繰り越しはできません。
月120分。1時間の会議なら2本で使い切ります。
そして24ヶ月を過ぎると、無料枠そのものがなくなります。 以降は有料プランへの加入か、文字起こしパッケージの追加購入が必要です。録音機能自体は期間に関係なく使えますが、文字起こしは止まります。
有料プランの水準はこうなっています。
| プラン | 料金 | 文字起こし |
|---|---|---|
| Pro | 年額15,980円 | 月1,200分 |
| Unlimited | 年額38,980円 | 無制限 |
まとめ要約とAsk AIは有料プラン限定です。無料枠では文字起こしまでで、要約は使えません。
なお、無料の文字起こし時間は1アカウントあたり月300分が上限とされています。Liberty 5 Pro Max を2台同じデバイスで使う場合は240分/月が上限、という注記もあります。
「1万円払えば議事録が無限に作れる」ではありません。 毎日の会議をすべて記録する使い方なら、本体の差額1万円に加えて、年額1.6万円前後が継続的にかかる計算になります。
条件3:勤務先の情報管理規程
会話の音声がAI処理を経由します。社内規程がこれを許容しているとは限りません。
顧客情報や未公開の事業情報が含まれる会議であればなおさらです。「便利だから」で始めて、あとから問題になるほうが損害は大きくなります。使う前に、情報システム部門か上長に確認してください。
個人的なメモや、自分ひとりの音声メモであれば、この問題は生じません。
条件4:相手の同意
対面録音である以上、同席者に無断で録音することになります。
法的に問題とならないケースであっても、業務上の信頼関係は簡単に壊れます。録音するなら開始前にひと言伝える。それだけの話ですが、伝えられない相手や場面であれば、そもそもこの機能は使えません。
判定:あなたはどちらを買うべきか
条件を通すと、対象者はかなり絞られます。
Pro Max を選ぶ理由がある人
- 対面の商談・取材・ヒアリング・講義が定期的にある
- 録音することを相手に伝えられる関係性・立場である
- 勤務先の規程上、AI処理を経由することが問題にならない
- 記録の頻度が月120分に収まる、または年額1.6万円を払う価値がある
- 別途ボイスレコーダーを持ち歩くのをやめたい
この5つが全部そろって、はじめて1万円に見合います。
Pro で十分な人
- 会議がオンライン中心(現時点では録音対象外の可能性がある)
- 音質・ノイズキャンセリング・通話品質が目的
- 録音は年に数回あるかどうか
- ケースは軽いほうがいい
私自身は後者でした。会議はほぼオンラインで、対面の商談はほとんどありません。条件1の時点で脱落しています。
この記事で書けないこと
正直に書いておきます。
筆者はPro Maxを所有していません。 したがって、文字起こしの精度がどの程度かは評価できません。 社名や業界用語が正しく変換されるのか、複数人の会話で話者を識別できるのか、要約が実用に足るのか。これらは実機で試さなければ分かりません。
この記事が扱っているのは、その手前にある「そもそも自分の用途で使えるのか」という条件です。精度が優秀でも、オンライン会議が対象外なら意味がありません。順番として、条件の確認が先に来ます。
精度を重視して判断したい方は、実際に購入してレビューしている記事を併せて読んでください。
まとめ
- イヤホン本体の性能は完全に同一。 音質・ANC・通話・装着感で差はない
- 1万円の差は充電ケースのAIボイスレコーダー機能(+大型ディスプレイ)
- 現時点で確実に録音できるのは対面の会話。 オンライン会議・通話は対応予定の段階
- 文字起こしの無料枠は月120分、24ヶ月まで。 以降は年額1.6万円前後のプランが必要
- 勤務先の情報管理規程と、相手の同意という前提をクリアできるか
上の5つを確認して、それでも「対面の記録を取る機会が多い」と言えるならPro Max。そうでなければ、Proを買って1万円を別のことに使ってください。
イヤホンとしての体験は、どちらを選んでも同じです。

